目次
生物多様性の重要性
国内外の動向
北九州市の生物多様性

現在、過去に類を見ないスピードで生物多様性が失われています。
過去にも自然現象などの影響により大量絶滅が起きていますが、現在は第6の大量絶滅と呼ばれています。
人間活動による影響が主な要因で、地球上の種の絶滅のスピードは自然状態の約100~1,000倍にも達し、世界の生物多様性は過去50年で73%損失したという報告もあります。これにより、たくさんの生きものたちが危機に瀕しています。


森、里、川、海。様々なところに、様々な生きものが暮らしています。
この多彩な自然環境と生きものは、それぞれ相互につながり、長い長い年月を経て、お互いになくてはならない関係が構築されました。この「様々な生きものとそのつながり」のことを「生物多様性」といいます。
生物多様性には、「生態系」の多様性、「種」の多様性、「遺伝子」の多様性という3つの多様性があるといわれています。

みんなつながっている
生物多様性とは、生きものたちの豊かな個性とつながりのことです。
地球上には様々な自然の中に、長い歴史の中でそれぞれの環境に適応して進化した多様な生きものが存在しています。
これらの生命は一つひとつに個性があり、全て直接に、間接的に支えあって生きています。

価値としての考え
私たちの生活や事業活動は、食料、水や燃料の供給をはじめ、様々なかたちで生物多様性がもたらす恵みに支えられています。
こうした恵みを、「生態系サービス」と呼んでいます。
この生態系サービスは、さらに「基盤サービス」「供給サービス」「文化的サービス」「調整サービス」の4つに分類されます。
ひとたび、生物多様性のバランスが崩れると、食料、水、衣服、燃料など生活に必要なものが失われたり、土砂くずれや洪水などの自然災害の発生頻度が高くなったりと、私たちの生活自体が成り立たなくなります。

例えば私たち人間が生きるためには、何か食べなくてはいけない。
そして私たちの食物は、動物性にしろ植物性にしろ、すべて他の生物の体の一部なわけです。
また私たち生物は呼吸をし、二酸化炭素を発生させます。
この二酸化炭素を環境の循環の中に戻すためには、植物の光合成が必要。
植物は、二酸化炭素から酸素を取り除いて排出し、残った炭素から他の生物が利用できる炭水化物を作り出してくれています。
そして代謝によって生じるのが排泄物ですが、それを下水処理場で分解し浄化してくれるのは、さまざまな微生物。
ちなみに皆さんに嫌われているゴキブリの本来の仕事は、森で動物の死骸や落ち葉を分解することです。
つまり、1つの生物だけが自立的に生きていくということは不可能で、地球上にいる生物はエネルギーや情報、物質を交換し相互に関わりあいながら生きている。
それが“生物多様性”が大切な理由です。
【出典:エコジン(環境省)福岡伸一先生インタビュー】

世界の農作物全体のうち35%は、ハチなどの花粉を媒介する生き物がいないと育たないと言われています。
また、それらの農作物の市場価値は、年間2,350億ドル~5,770億ドルに上ると推計されています。
このように、身の回りの小さな虫でさえ、いなくなってしまうと私たちの生活に大きな影響が生じることになります。


生態系は生きもの同士の複雑な相互作用により成り立っています。
アメリカの生態学者であるロバート・トリート・ペイン博士の実験によると、岩場に生息するヒトデを取り除いたところ、ヒトデが捕食していたフジツボが急激に増え、岩場を覆い尽くしました。すると岩場の藻類は育たなくなり、今度は藻類を捕食していた貝類が減少しました。
その結果、岩場に生息していた15種の生きものは実験終了時には8種まで減少しました。
この実験により、生態系に及ぼす影響が大きく、全体の安定化に欠かせない重要な種である「キーストーン種」の存在が証明されました。
先人が守り育んでくれた生物多様性は、一度損なわれると再生するのは非常に困難です。
生物多様性に配慮して、持続可能な利用を行うことがたいへん重要です。

プラネタリーバウンダリーとは、人間が地球上で持続的に生存していくために、超えてはならない9つの要素の限界点を示したもので、いわば、地球の健康診断のようなものです。
既に、生物多様性を含む6つの要素は限界値を超えており、ネイチャーポジティブの実現は、地球規模の課題となっています。


北九州工業地帯の発展に伴い、多量の工場排水が海へ排出されました。
これにより、洞海湾では水質の悪化が進み、酸性化により湾を航行する船舶のスクリューが溶け、魚もすめない「死の海」と呼ばれていました。
今では、水質も改善し、100種類を超える魚介類の生息が確認されています。

過疎化等により、土地の管理に手が回らなくなり、採草地や雑木林が森林に遷移することで生態系の多様性が失われます。
放置竹林は、管理されなくなった竹林が周囲の森林に広がることにより、森林が持つ「水を蓄える力」や「土砂災害を防ぐ力」を弱らせることはもとより、スギやヒノキの成長を妨げるなど、様々な問題があります。

人間により外来種が持ち込まれ、それらが野外に放たれ定着することで、従来の生態系が失われてしまいます。
北九州市においても、繁殖力の強いオオキンケイギクが確認されています。
一方、アライグマについては、生態系だけでなく農作物被害や、生活環境への被害も生じています。また、感染症の危険性もあります。
外来生物法では、海外起源の外来種のうち、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものを「特定外来生物」に指定しており、オオキンケイギク、アライグマ等が含まれています。

気候変動の影響による海水温の上昇などにより、ウニや魚の食害により海藻がなくなる「磯焼け」が問題となっており、北九州市でも磯焼けが認められています。
藻場は、魚やイカなどの産卵の場にもなり、海の生態系にとても重要であるとともに、近年は、温室効果ガスの吸収源、いわゆる「ブルーカーボン」としても注目されています。
引き続き、藻場の保全等に努め、漁場環境の改善を図り、将来にわたって、持続的な活用ができる里海づくりを推進します。


2022年にカナダ・モントリオールで開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)において、世界の生物多様性を保全する、2030年までの国際目標を定めた新たな枠組みである、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。
この枠組みでは、2030年までのミッションとして、「自然を回復の軌道に乗せるために生物多様性の損失を止め反転させるための緊急の行動をとる」ことが新たに掲げられており、こうした生物多様性の損失を止め、反転させることで自然を回復軌道に乗せる、
いわゆる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」を目指す動きが世界的に加速しています。
これは、SDGsの目標「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」などにも貢献します。

30by30とは、2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標です。
2030年までのネイチャーポジティブの実現に向けた目標の1つとして、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」における、2030年グローバルターゲットに盛り込まれています。
なお、日本では、陸域20.5%と海域13.3%が保護地域として保全されています(2021年時点)。

OECM(※)は、国立公園等の保護地域以外で、生物多様性を効果的に保全しうる地域のことをいいます。
具体的には里地里山、水源の森、都市の自然等がこれにあたります。
OECMの登録を増やすことで、30by30の達成を目指します。
※OECM:Other Effective area-based Conservation Measures

<国家戦略>
このような国際的な動向を踏まえて、日本においても、地球の持続可能性の土台であり、人間の安全保障の根幹である生物多様性・自然資本を守り活用するための戦略である「生物多様性国家戦略2023-2030」が策定され、2023年3月に閣議決定されました。

<国家戦略の主なポイント>
・生物多様性損失と気候危機の「2つの危機」への統合的対応、ネイチャーポジティブ実現に向けた社会の根本的変革を強調
・30by30目標の達成等の取組により健全な生態系を確保し、自然の恵みを維持回復
・自然資本を守り活かす社会経済活動(自然や生態系への配慮や評価が組み込まれ、ネイチャーポジティブの駆動力となる取組)の推進

<法律の制定>
また、2024年4月には、「地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律(生物多様性増進活動促進法)」が成立・公布されました。
この法律では、企業等による地域における生物多様性の増進のための活動を促進するため、これらの活動に係る計画の認定制度を創設し、認定を受けた活動については、手続のワンストップ化や規制の特例等を受けることができます。
このように、法制度も含め実施環境を整備することを通じて、国を挙げてネイチャーポジティブ実現への機運を高めています。

ネイチャーポジティブの実現に向けては、企業の取組も非常に重要です。
2024年3月に国が策定した「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」では、ネイチャーポジティブの取組が、企業にとって単なるコストアップではなく、自然資本に根ざした経済の新たな成長につながるチャンスであることが示されています。
今後は、こうした取組を通じた、企業価値の向上や、ビジネス機会の創出が期待されるなど、ネイチャーポジティブ経済への移行が強く求められています。



工業を主体として産業都市として成長し、九州を代表する大都市として発展を遂げてきた北九州は、先人が守り育ててくれた、都市に近接する豊かで面白い生き物や自然、
いわばアーバンネイチャーにあふれる街です。

若松区北部につらなる海岸で玄海国定公園に属する景勝地。
遠見ヶ鼻や千畳敷といった荒波で浸食された独特の地形が見られる。

若松区の頓田貯水池を中心に山林や草原等の様々な自然環境がひろがる市内最大の公園。
花や緑、イベントやキャンプ等、レクリエーションが楽しめる。

廃棄物処分場の埋立地に雨水がたまり、湿地や草地等多様な環境ができ、そこに希少種を含む多くの生物が生息するようになった奇跡の場所。
環境省の重要湿地に指定されている。

北九州市を代表する標高622mの山。
北九州国定公園の一部。野鳥や昆虫等、市街地のすぐ近くで、たくさんの動植物等が生息している。

小倉南区の合馬は、土壌改良や、一年中手間をかけた竹林管理がなされており、良質で美味しいたけのこが穫れる産地である。

北九州市では、ホタルの保護や水辺の保全といった地域活動が盛ん。
まちなかの河川でもたくさんのホタルの飛翔が見られる。
市内にはホタルをはじめとした水辺の生き物などを展示する2カ所のほたる館が設置されている。

3億4千万年前の赤道近くの海の海洋生物(サンゴ、フズリナ)の死骸が石灰岩になったものであり、羊群原が特徴。
日本三大カルストの一つ。北九州国定公園、一部、国の天然記念物に指定。

九州と本州を隔てる約28kmの海峡。
海上交通の要所であり、壇ノ浦の合戦等歴史の舞台にもなった。
瀬戸内海国立公園に属する。

小倉北区の中心市街地を流れる紫川にあり、川・自然・環境について、楽しく学べる施設。
川の中を横から見られる巨大な観察窓が特徴。

環境省の重要湿地であり、面積517haの広大な砂泥干潟。
日本最大級のカブトガニの産卵地で渡り鳥の飛来地としても有名。
昔から好漁場で現在もカキ養殖等が盛ん。

小倉北区南西部に位置する約140haの広域公園。
戦時中は軍事施設であったため開発を免れ、広葉樹の自然植生が残る貴重な場所。

生物多様性については環境省ホームページ
みんなで学ぶ、みんなで守る 生物多様性 Biodiversity 生物多様性に迫る危機」も併せてご覧ください。

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