課題解決EXPO2026(2026年7月8日~10日、於北九州メッセ)の開催セミナー「北九州市環境産業推進会議 講演会」において、響灘ビオトープ園長の安枝裕司氏による講演「ネイチャーポジティブがもたらす競争優位~企業の価値を捉え直すネイチャーポジティブ経営への転換~」が行われました。
講演では、ネイチャーポジティブとは、生物多様性の損失を止め、自然を回復軌道へと転換させる世界的な目標であることが紹介されました。また、気候変動対策と同様に、企業活動においても生物多様性への配慮が重要な経営課題となっていることが説明されました。
企業にとってネイチャーポジティブへの取組は、単なる環境保全ではなく、企業価値の向上や投資家・金融機関からの信頼確保、さらには事業リスクの低減や新たなビジネス機会の創出につながる取組として期待されています。近年はTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)やCDP(企業等の環境への取組や情報開示を評価・公表する国際的な評価機関)などを通じ、生物多様性に関する情報開示も求められるようになっており、企業経営との結び付きが一層強まっています。
事例紹介では、工場や事業所の自社敷地内における緑化や、雨庭(あめにわ)を設置して急激な雨水の流出を防ぐことによって水害を緩和する取組などが紹介されました。これらは、自然が本来持つ機能を活用する「グリーンインフラ」の考え方に基づくものであり、必ずしも新しい技術ではなく、昔ながらの知恵を現代に生かした取組であることが説明されました。このような自然の機能を活かした手法は、生物多様性の保全だけでなく、防災・減災などの社会課題の解決にもつながることから、近年、導入が広がっているそうです。 また、自社敷地外で実践できる事例として、北九州市内の企業による外来種の駆除、湿地での生物調査や渡り鳥の生息地保全、植樹活動などが取り上げられました。こうした活動には、従業員だけでなく、その家族や市民が参加する例もあり、企業が地域と連携して生物多様性の保全に貢献できることが示されました。さらに、環境省の「自然共生サイト」認定制度や、響灘ビオトープを活用した企業との協働事例についても説明があり、企業が地域と連携しながら自然環境の保全に取り組む意義が強調されました。
講演の最後には、「ネイチャーポジティブ経営はコストではなく未来への投資であり、自然との共生を経営に取り入れることが持続可能な企業価値の創出につながる」とのメッセージが示され、企業経営と生物多様性保全を一体的に考えること、さらに、ネイチャーポジティブだけでなく、資源循環(サーキュラーエコノミー)、脱炭素(カーボンニュートラル)の三本柱で推進することの重要性が印象付けられました。

講演の様子