~地域の米と水を守り、北九州の風土を醸す酒づくり~

溝上酒造株式会社

溝上酒造株式会社 - 北九州の風土を醸す酒づくり
溝上酒造株式会社 企業基本情報
企業名 溝上酒造株式会社
業種 飲料・たばこ・飼料製造業
設立 1952年
所在地 福岡県北九州市八幡東区景勝町

■ ネイチャーポジティブ実践事例のご紹介

~地域の水と米を守り、北九州の風土を醸す酒づくり~

北九州ネイチャーポジティブネットワークでは、企業による多様な取組を共有し、事業と自然との関わりを見つめなおすことで、地域経済の活性化と生物多様性の保全を両立する「ネイチャーポジティブ」の実現に向けた取組に繋げることを目指しております。

本記事では、ネットワーク参画企業である、溝上酒造株式会社の「米」「水」「地域との連携」を重視した取組をご紹介します。溝上酒造株式会社は、地元産にこだわり、事業活動の発展とともに地域の自然を守り育まれてきた、まさにネイチャーポジティブ経営の模範となる企業です。

■ 企業紹介

北九州市八幡東区で創業100年以上の歴史を持つ溝上酒造は、代表銘柄「天心」で知られる北九州を代表する酒蔵です。

日本酒づくりに欠かせない原料は「米」と「水」。同社では北九州市内や近隣地域で栽培された酒米を使用するとともに、皿倉山系の伏流水を仕込み水として活用しています。

「北九州の米を、北九州の水で、北九州で醸す」という考えのもと、地域の自然資本と深く結びついた酒づくりを続けています。

また、溝上酒造では蔵開きや音楽イベントなどを開催し、多くの市民が酒蔵に集う機会を創出しています。

ジャズライブやバンド演奏など異なる分野とのコラボレーションを通じて、日本酒に馴染みのない人にも酒蔵を知ってもらうきっかけを提供しています。

こうした活動は地域文化の継承や交流人口の拡大にもつながり、酒蔵を核とした地域コミュニティづくりにも貢献しています。

「天心」の看板を掲げた白壁と瓦屋根の溝上酒造の建物
溝上酒造株式会社
ソファに座り資料を手に笑顔を見せる溝上代表
溝上代表

■ こんなところがネイチャーポジティブ経営!

● 日本酒づくりそのものが自然との共生

日本酒づくりは米・水・麹という自然由来の原料から生まれる産業です。

溝上酒造では、地元農家が栽培した酒米を積極的に活用し、生産者との信頼関係を大切にしています。地元の田んぼや生産現場が見える関係性は、安心・安全な原料調達だけでなく、地域農業を支えることにもつながっています。

「その土地で育った米と水で酒を造ることが、地域らしさであり酒蔵の価値である」と考え、地域資源を活かした酒づくりを実践しています。

● 地域農業の維持が自然環境を守る

日本酒の原料となる「酒米」の調達は、単なる材料買い入れではありません。水田は、人の手を適切に入れることにより多くの動植物が息づく「湿地帯」としての機能を持ち、生物多様性を守る重要な拠点です。

農家の高齢化や担い手不足により水田が耕作放棄地となれば、その生態系は失われます。溝上酒造が地元産米を適正な価値で購入し続けることは、農家の生計を支え、結果として広大な水田という生物多様性拠点を地域に維持し続けることにつながります。

また、気候変動による酒米の高温障害など、農業を取り巻く環境は年々厳しくなっています。こうした社会および環境の変化に対応しながら地域農業を持続可能なものにしていくことが、将来の酒づくりと自然環境の両方を守ることにつながると捉え、地元農家との連携を強化しています。

● 皿倉山の伏流水を守りながら活かす

溝上酒造の酒づくりを支える仕込み水は、皿倉山系の地下水です。

溝上酒造は大分県で創業し、北九州市へ拠点を移す際に市内各地を調査した結果、豊富で良質な地下水が得られる現在地を選びました。現在も敷地内の井戸から汲み上げる皿倉山系の地下水を酒造りに使用しています。鉄分が少なく吟醸造りに適したやや軟水で、地元の酒米とともに、同社ならではのすっきりとした味わいを支えています。

同社は、定期的な水質調査により地下水の健康状態を多角的に分析し、酒造りの品質管理と同時に皿倉山の環境変化を監視しています。この活動は森林や地質の異変を察知する「環境センサー」の役割を担い、地域の豊かな自然資本を科学的な視点で見守り続けています。

● 循環型産業としての日本酒づくり

日本酒づくりでは、原料由来の副産物も無駄なく活用されています。

精米時に発生する米ぬかは食品や飼料などに利用され、酒粕も食品原料として活用されています。また、一升瓶などの容器はリユースが進んでおり、廃棄物が比較的少ない産業構造となっています。さらに、地産地消型(地元米・地元水)により、輸送に伴うCO2排出抑制に繋がっています。

同社では「酒づくりそのものが循環型のものづくりである」と考え、資源を無駄にしない取り組みを継続しています。

緑色の大きなタンクが並ぶ蔵の内部
きめ細かに管理された蔵の中
山あいの住宅地を流れる、草に囲まれた小川
皿倉山からの水流

■ 今後の展望

溝上酒造は、これからも地域の米と水を活かした酒づくりを大切にし、農業や自然環境とのつながりを重視した取組を今後も続けていく方針です。

また、気候変動や農業の担い手不足といった課題に向き合いながら、地域農家との連携を深め、北九州の自然資本と共に発展する酒蔵を目指しています。

■ まとめ

溝上酒造の取り組みは、何か特別な環境活動を行うのではなく、「地域の自然の恵みを活かし、その価値を地域へ還元する」という酒蔵本来の営みそのものがネイチャーポジティブにつながることを示しています。

地域の米を活用し、地下水を守り、生産者と連携しながら酒を醸す。そして、酒蔵を地域交流の場として開くことで、人と自然、人と地域をつなぐ役割を果たしています。

自然資本への依存と感謝を事業の根幹に据えた溝上酒造の姿勢は、地域産業がネイチャーポジティブ経営を実践する上で、多くの示唆を与える事例といえるでしょう。

※取り組みに関心をお持ちの企業・団体の方は、北九州ネイチャーポジティブネットワーク事務局までお問い合わせください

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